当院では2011年6月にMRI装置を更新し、ドイツシーメンス社製の3.0T MRI装置を導入し、稼動開始しました。

この装置は検査を受ける方の環境を大幅に改善させるシステムを搭載しています。
従来のMRI装置は狭いガントリ(トンネル)に長時間入らなくてはいけないため、不安を抱く方も多かったのですが、この装置は今までのMRIと比較して開口径が直径10cm広い70cmと広く、またラッパ状のトンネル構造により検査時の圧迫感を軽減しています。
また、検査時の騒音も、オーディオコンフォートという静音技術により、従来より静かな検査が可能になっています。

また、この装置にはTimと呼ばれる最新のRF技術が搭載されています。
TimとはTotal imaging matrixの略で、軽量な多チャンネルコイルを自在に組み合わせて使用できるコイルシステムです。検査を受ける方もコイルが軽いので負担が軽減しますし、病気の診断に必要な範囲の検査を簡単に行うことが可能になります。

そして最大の特徴は、前述のTimコイルと最新のアプリケーションの組み合わせによる、検査の質の向上です。いくつかの代表的なものを紹介します。

高解像度画像

コイルの感度が上がっているため、高画質検査が可能になり、従来では見つからなかった小さな疾患を検出することが可能になります。

短時間検査

また、パラレルイメージングという時間短縮撮技術により検査時間を従来の1/2~1/3に短縮する検査もできるようになりました。腹部検査時の息止め時間の短縮など、被検者の状態に合わせた検査が可能になります。

新たに可能になった検査

さらに3.0T MRI装置の導入により、各専門分野においてもより臨床に有用な検査が可能になりました。中枢神経領域においては、形態画像の取得だけでなく、fMRI(ファンクショナルMRI)という脳機能を画像化する検査が可能になりました。これは手を動かしたり、言葉を話したりする際に使用する脳の血流状態の変化を解析する検査方法です。
またディフュージョンテンソルという神経を描出できる撮影や、スペクトロスコピーという脳内の代謝状態を観察する特殊な撮影方法などが可能になりました。
新しい撮像法を組み合わせることにより、病気のより確実な診断につなげるだけでなく、安全な手術シミュレーションやリハビリの効果の判定などに活用できる可能性があります。

体幹部領域においても、新しい検査法が加わりました。
精度の高い呼吸同期撮影による高画質の腹部検査に加え、精度の高い脂肪抑制撮影も可能になりました。また造影剤を使用しない高分解能の3DのMRCP検査(磁気共鳴膵胆管造影法)は診断だけでなく、胆嚢摘出手術前の正確なシミュレーションにも貢献します。
さらに造影剤を使用しない下肢血管撮影や、腎動脈などの高画質検査は腎機能低下などの被検者に選択できる検査として有効です。Timコイルとの組み合わせにより全下肢などの広範囲の撮影も可能です。
解像度の高い造影ダイナミック検査技術の進歩により、腫瘍診断において検出能が向上しました。特に乳腺MRI検査においては両側の乳房を高画質に検査できる専用のコイルも合わせて導入しました。昨今、MRIマンモグラフィ検査は乳がんの検出能力に優れた方法であり、診断、手術シミュレーションや、薬物療法の効果判定などにも役立つと期待しています。
また、急性期の脳疾患の検査においても、高画質のディフュージョンによる脳梗塞の診断や、SWIという最新の撮像法による出血の診断、さらに動きの抑制がきかない被検者でも診断可能な画像を提供できる体動補正技術(BLADE)により診断能の高い検査が可能になりました。

今回、3.0T MRI装置を導入したことにより西脇市の地域基幹病院としての機能を強化できたものと確信しております。

最新型へのバージョンアップ

当院のMRI装置は、2014年10月に最新型へのバージョンアップを致しました。
3T(3テスラ)という高磁場に加え、デジタル高密度コイルの搭載により、一層の高速・高精細な画像診断が可能となりました。
頭部の小さな病変(腫瘍,梗塞など)や血管の状態、整形外科領域や腹部などの全身の検査診断が可能です。